私たちには、障害に限らず、家庭であるいは職場で、個人の人生において、様々な苦難が訪れます。
生まれてから死ぬまで、何もなく右肩上がりの人生なんてあるわけがなく、山あり谷ありがふつうでしょう。
時には受け入れがたい苦難に出会うこともあります。
しかし、この苦難をどう捉えるかによって、人生観というものが変わってくると聞いたことがあります。
「辛い、苦しい、逃げ出したい」毎日そう思えばそのような人生になりますし、逆に、与えられた苦難をテーマとして捉え、自分の役割を理屈抜きで受け入れることによって、「有難い、楽しい、がんばりたい」このような人生観が芽生えてくるというのです。
本当でしょうか?信じられますでしょうか?
ワークスタイルこすもは、現場、現実、現物の実践主義です。日々の取り組みの中で、私たちは知恵を手に入れて積み上げてきました。
まずは「心のあり方」、次に「正しい知識」、この2点を揃えることで、目の前の出来事がこれまでとは違うように感じられ、あらゆる実践がしやすくなったように思います。
私たちのこれまでの経験や知恵が、みなさまの勇気となりますことを心より願っています。
ご家族が正しい知識を持ち、ご本人の「人生」と向き合う
知的障害や発達障害を持つご家族にとって、ご本人を前に、戸惑いなど心を痛めることも多くあると思います。
まずご家族が正しい知識を持ち、心穏やかに、ご本人の障害の度合いに応じて正しく接することは、ご家族にとってもご本人にとっても、幸せな道なのではないかと考えています。
わかりにくい知的障害について、一般の方にもわかりやすくまとめてみました。
私たちならではな解釈もございますが、ご家族のみなさまの参考になると幸いです。
知的障害の定義
身体障害のようにはっきりと目に見えるような障害と違い、知的障害には一般的な定義はありません。
それだけ多岐にわたる、というよりは、障害もまた一人ひとり違った個性というのが正しい見方です。
しかし社会システムとしては、一人ひとりの理想的な個別対応を今すぐ構築することは難しいことも事実としてあります。
このため知的障害者福祉法では、知的障害の目安を提示し、社会で支援するための判定指標が示されています。
面接および観察所見と、標準化された個別知能検査の結果をもとに評価するとされています。
- 知的障害とは、心身の発達期(概ね18歳まで)に現れた、生活上の適応障害を伴う知的機能障害のため、医療、教育、福祉等の援助を要する状態を指します。
- 1)発達期(概ね18歳まで)の障害であること
- 2)知的機能障害があること
- 3)家庭または社会生活上の適応障害があること
- 知能指数(IQ)による程度区分は、次のとおりとされています。
- 1) 最重度(おおむね20以下)
- 2) 重度(おおむね20から35)
- 3) 中度(おおむね35から50)
- 4) 軽度(おおむね50から70ないし75)
- 社会生活能力は、次の5つの領域について、社会調査、諸検査及び行動観察をもとに評価するとされています。なお、適応行動上の障害の有無が微妙な場合は、抽象的な思考力、判断、推理及び臨機応変の対応が可能か否かの点を重視して評価が行われます。
- 1) 身辺処理(食事、排泄、着脱衣、入浴、洗面、整容)
- 2) 移動(身体移動、交通移動)
- 3) 意志交換(了解、表現)及び集団参加(人間関係)
- 4) 生活文化(読み書き、計算、時間及び健康管理)
- 5) 作業(家事、職業) ※程度別の判定指標は別途、詳細な指標があります。
- 介護度については、行動面の監護および保健面の看護の困難性の度合いを把握することが目的で、 次の項目について社会調査、諸検査及び行動観察をもとに評価するとされています。
- 1) 配慮を要する行動(失禁、異食、興奮、多寡動等)
- 2) 身体障害(盲、ろうあ、肢体不自由、虚弱、けいれん発作等)
知的障害の種類と原因
発達期(概ね18歳まで)までに生じた知的機能の障害によって、認知能力(理解・判断・思考・記憶・知覚)が全般的に遅れた水準にとどまっている状態のことです。
原因は、大きく3つに分類されます。
- 1)病理的原因
染色体異常などの先天性疾患、出産時の酸素不足などの事故、生後の高熱などによる障害。 - 2)生理的要因
脳の発達過程に起きる障害。知的障害の多くの方は本要因によるものです。 - 3)心理的要因
著しく不適切な発育環境に置かれたことによる後天的障害。児童虐待などの原因がこの要因です。
知的障害の特徴
- 理解力が乏しい
- 表現力が乏しい
- 注意力が乏しい
- 集中力に欠ける
- 記憶量が少ない
- 幼稚な行動が消えない
- コミュニケーションの障害(会話のキャッチボールができない、続かない)
- 注意をするとパニックになる
- 身の回りのことに時間がかかる
- 字の読み書きなどに時間がかかる
※上記は、一例です。
知的障害と発達障害の違い
発達障害とは、生まれつきの脳の機能の発達に関する障害です。
発達障害では、様々な二次的な障害が起こりやすくなり、その現れ方も、ご本人の特性や性格などによって様々です。
発達障害は、大きく4つに分類できます。
- 1)注意欠如・多動性障害(ADHD)
注意力が欠け、落ち着きがなく、時に衝動的な行動を取るなど - 2)自閉症スペクトラム(ASD)
対人スキルや社会性などに問題がある「自閉症」や「アスペルガー症候群」など - 3)学習障害(LD)
ある特定の能力(読む、書く、聞く、話す、計算、推論など)の習慣に不都合があるなど - 4)その他
コミュニケーション障害(CD)、運動障害(MD)、神経発達障害群(OND)など
※知的障害と発達障害を併せ持たれた方や、複数の発達障害を持たれた方もいます。
知的障害の方への接し方
1.わかりやすく「短くはっきりと!!」伝える
言葉だけでなく、身振り・手振り・絵・写真などを交えて、ゆっくりと穏やかに話しかけます。
2.褒めて自信をつけさせる
できないことを責めるのではなく、本人の得意なこと、できることにフォーカスし、褒めて自信をつけさせて、能力を伸ばします。
3.曖昧な表現はしない
わかりにくい表現は避け、イヤなことは「イヤ」、ダメなことは「ダメ」とはっきり伝えます。
「短くはっきりと!!」
- 例)○「イヤ」 ×「やめて」「しないで」
- 例)○「ダメ」 ×「ダメだよね」「もうしないよ」
ワークスタイルこすもでは、朝礼で「心」を合わせ「人」を育てる
正しい知識を持つことで、心を穏やかに、ご本人の障害の度合いに応じて正しく接することができるようになります。
知的障害・発達障害の方の能力は、訓練によって私たちの想像を超えて力を発揮されます。
ワークスタイルこすもでは、朝礼を「心を合わせて人を育てる場」と考えて、実直に日々コツコツお互いの対話を深めています。
「どうせ話したって理解できなから」というような諦めは一切ございません。
実際の朝礼のワンシーンをいくつか、ご紹介いたします。
平熱を知ろう!
年末よりインフルエンザの大流行がニュースになっていますが知っていますか?
ワークスタイルこすもでも1名の患者が出ましたので、本日より健康管理のための検温を開始いたします。
起床時・出社時・昼休み・帰宅前・就寝時の5回検温を行い、自分の平熱を知り、体調不良の早期発見へ繋げていきましょう。
平熱が36度以下の人は、癌や病気になりやすいと言われています。平熱が低い人は体温を上げる取り組みを行いましょう。
自分の平熱を知り、そしてみんなで、平熱を上げる運動を心掛け、食事療法で体温上昇を目指そう!
ラジオ体操、身体模倣の大切さ
昨年から始めたラジオ体操、最初はバラバラの動きで、見本の職員と同じ動きが出来ない方が多くいました。
でも、本日のラジオ体操は、とても良くなっていました!
ラジオ体操は健康維持のためにとても良い体操ですが、他にも、働く上でたくさん役に立つ訓練となります。
例えば、両手を真っすぐ上に伸ばす場面を思い出してください。
体と平行に真っすぐ伸ばせる人と、YMCAの歌のように「Y」と開いている人がいました。
見本を見て同じように自分の体で表すと言うことは簡単な事ではありません。
しかし、見た動作をすぐにマネできるようになれば、新しい仕事を始めるときに、指導員の動作を見てすぐに自分で作業を開始できるようになり、作業量もアップしてきます。
一方で、見ただけでは同じ動作が出来ない人は、作業指導を受けながらの練習の時間が必要となりますから、大事な作業の時間が減ってしまいます。
作業量が増えると給料は増える、しかし作業量が減ると、給料が下がります。
見ただけで同じ動作が出来るようになることが出来たら、「得」をすることが分かります。
みなさんも毎日のラジオ体操を何となく行うのではなく、真面目に集中して模倣が出来るようにがんばりましょう。
契約書を読んでみよう
みなさんは、ワークスタイルこすもで働く訓練をするために、契約を結んでいることは知ってますか?
ほとんどの人は、高校卒業とともに訓練を開始したので、じつはすでにご家族が契約手続きを済まされています。
契約書には、訓練を受けるための決まりや約束がたくさん書かれています。
また、就職をして働く場合も同じように「労働契約書」というものを結ぶ事となります。
もしも、契約書に違反をした場合には、訓練や仕事を辞めてしまわなければいけなくなります。
契約書は、普段会話では使われないような文章で書かれていますが、契約書を読んで理解する力は社会人にとって、とても必要なことです。
みなさんも必ず契約書を読んで、分からないことは質問をして学びましょう。
羞恥心のお話
みなさんは、羞恥心という言葉を聞いたことがありますか?
以前、男性ユニットグループが「羞恥心」を連呼しながら歌っていたことがありました。
言葉は聞いたことがあって知っていても、その意味は分かりますか?
羞恥心とは、「恥ずかしいなと思う気持ちを感じること」です。
女性ならば小学校4年生ごろから、男性ならば小学校5~6年ごろから、羞恥心が芽生えます。
例えば、教室内で体操服の着替えを、男女が一緒にすることに抵抗を感じ始めるころに、羞恥心が芽生え始めると言われています。
さて、訓練生のみなさんは、「羞恥心」を意識した生活が行えているか一緒に考えてみましょう。
先日、この方は羞恥心があるのかな?と、疑問に思う出来事がありました。
訓練生のご家族からお電話をいただき、お話を聞いておりましたら、受話器から聞きなれた訓練生の声が聞こえてきました。
「セブンに行こうよ」「早く~早くいきたいな~」
ご家族はこの状況はいつもの事だと、意に介さず会話を続けていました。
私はあまりのうるささに、何を言っているのか尋ねたところ、「割引クーポンを貰ったのでコンビニに買い物に行こうと言っています」とのこと。
電話中のご家族のすぐそばで、声が漏れ聞こえていることは本人にも分かっているようでした。
むしろ、聞こえるようにはしゃいでる様子で、会話中の母親にツッコミを入れるなど明らかに会話に参加しているつもりらしい…。
私は残念で、あきれてしまいました。
本来ならば、恥ずかしいので声が聞こえないように静かにしている年齢です。
電話の相手(私)が不愉快な気分や違和感を感じることを、ご家族からは教えられていない様子でしたので、本日のお話といたしました。
みなさんは成人を過ぎ、誰が見ても立派な大人に見えます。
ただ、このような行動を取っていると、周りから「変だな?見た目は大人、行動は小学生の低学年のようだ」と感じられてしまいます。
さて、みなさんは他の人からこのように見られる、感じられることは、良いことと思いますでしょうか?
ぜひ、普段から、「羞恥心」という言葉を思い出して、意識した行動を取るように心掛けてください。
まとめ
知的障害や発達障害を持つご家族にとって、ご本人への理解が壁のように感じられ、心を痛めることも多くあると思います。ある種の諦めにも似た感情が押し寄せたり、自分を責めたり。
しかしまずご家族が正しい知識を持ち、心穏やかに、ご本人の障害の度合いに応じて正しく接することで、ご本人の能力は想像以上に開花します。
それは、ご家族にとってもご本人にとっても、幸せな道と私は考えます。
ワークスタイルこすもでは、「どうせ話したって理解できないから」このような諦めは一切ございません。
今回ご紹介した朝礼は、ワークスタイルこすもの日常であり、私たちの基本姿勢です。
朝礼で、責任者およびスタッフ一同と、利用者さまの心を合わせて、日々コツコツとよりよく実践し、互いの自己革新に取り組んで参ります。