はじめに

今回は、「自閉症」について説明します。

自閉症と一言で言いますと、一つの障がいとして一括りにしがちですが自閉症スペクトラムという症候群で大きな枠組みの中に、いくつもに特徴が分かれています。

まずは、この違いを学び支援に役立てていきましょう。

自閉症について

(1)自閉症とは

自閉症は1943年に、レオ・カナー(アメリカの医師)が名付けました。カナーは、「早期乳幼児自閉症」と題した論文の中で、これまでの漠然とした自閉症の症状を
まとめています。

カナーによれば、自閉症は「外からのいろいろな情報や働きかけをきちんと知るはたらきに障害(認知に関する中枢神経の障がい)があるために、周りの状況を知り、それに対応することが上手くできない状態であると言います。

もちろん、カナーによる論文発表以前から、自閉症の方は世界中に沢山いました。1801年に、「アバロンの野生児」の文献には自閉症と知的障がいの関係が明らかに見て取れます。

(2)自閉症の定義

3歳までに、以下の3つを主な特徴とする行動的症候群である。

  1. 対人相互反応の質的な障がい (極度の自己中心的思考になる、被害妄想を持つ、ストレスによる他害行為など)
  2. 意思伝達の著しい異常またはその発達の障がい (言語の発達の遅れ、対人面での感情的な交流の困難さ、あるいは全くの無関心)
  3. 活動と興味の範囲の著しい限局性 (物を列や幾何学的に整然と配置する、反復的な行動を繰り返す、行動様式や興味の対象が極端に狭い、常同的に奇声を発する、手をひらひら動かす)

※なお、自閉症の症状は人により異なり、上記に挙げている状態があてはまらない場合もある。

(3)自閉症の大きな2つのタイプ

自閉症①のタイプ

カナー症候群いわゆる自閉症と呼ばれる。

※上記、1~3の3つの基本障がいと知的発達の遅れが伴う古典的自閉症(自閉症スペクトラム図より)
◆自閉症スペクトラム図(WIKIより)
自閉症②のタイプ

アスペルガー症候群(高機能自閉症・アスペルガータイプ)

※知的発達に大きな障害は無し、言葉を流暢に使い、知的・言語障害を供わないコミュニケーションにはそれぞれ独特の障がいが見られることも多い。

※上記、1~3の3つの基本障がいをもつ。アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム図より)
◆古典的自閉症とアスペルガー症候群の比較(WIKIより)

(4)その他の自閉症

ウイリアムズ症候群

稀な遺伝子疾患であり、精神遅滞、心臓疾患などがあり独特な顔つきを示す。7番染色体の遺伝子が欠失している。知能低下に比べて、言語は比較的良好で多弁であり社交的。IQ55程度。視空間認知に困難を示し、描画等が苦手であるが、顔の認識能力は高くアンバランスな特徴がある。
非定型自閉症

発症年齢が3歳過ぎてから突如として症状が現れるタイプの自閉症。自閉症の特徴が全て出るわけでは無く創造性、社会性、コミュニケーションのいずれか1~2つ該当する。発症年齢、症候状の両者の非定型。
高機能古典的自閉症

一般的に高機能古典的自閉症は、言語面が遅れており、アスペルガー症候群は言語の遅れがないものとされる。

高機能古典的自閉症は、特定分野への括り、空間認識や図形(ロゴや国旗)などに異様に反応を示し、学者、音楽家、芸術家、画家、デザイナーなどで活躍している人も多い。知的・発達の遅れを供わない。

「任意の日時の曜日を瞬時に答える」「知り合いの人の誕生日や車のナンバーなどすべて記憶している」「1回読んだ本をすべて覚えている」など特別優れた一分野の能力を持っている症状を「サヴァン症候群」と呼ぶ。

(5)自閉症は症候群

「これが自閉症のステレオタイプ(典型)」という人はいません。自閉症スペクトラム、つまり、全ての自閉症の人に有効な教育や援助の決まった方法というものは無く、ひとり一人に合わせて支援を考える必要があります。