初めに、お伝えしたい事は「障害」という言葉に大きな恐怖と不安を感じるかと思いますが、それは自分自身の心を痛めつけるだけですので止めてください。
「障害」は、一般的な人が難なく実行できることが同じようにすんなりできないだけで練習や予備知識(他の便利な物を活用)を持つことで、一般的な人と同じように実行する事が出来るようになってきます。
少し、手はかかりますが一緒に育む時間の中に、たくさんの思い出や笑顔が詰まっています。
「障害」は、ご両親のせいでもなければ、生まれてきた子供のせいでもありません。自分や相手を責めても何も変わりません。
それより、沢山の時間を子供と共に過ごし、時には色々な人の協力や福祉サービスを利用することで多くの「出来た」が育まれます。
安心して、少しづつ子どもとの練習の時間をルーチン化して楽しく生活をしましょう。
それが、この記事を書く私の想いです。
◆DCDの特性(6才~12才)
DCDの特性(6才〜12才) | ◇体の協調部分 | ▽協調動作 |
---|---|---|
片足でバランスを取れない | 下肢と上肢 | 立つ・広げる |
ボールのドリブルが出来ない | 足と目 | 走る・蹴る |
縄跳びが出来ない | 足と手 | 飛ぶ・片手で回す |
お風呂で頭の泡を洗面器で流すことが出来ない | 手と頭 | 汲む・傾ける |
リコーダーが出来ない | 手と息使い | 抑える・吸う吹く |
ノートのマス目からはみ出さずに字を書けない | 目と手 | 見る・書く |
消しゴムでノートを破いてしまう、上手く消せない | 右手と左手 | 押さえる・こする |
家庭で学童期の際に感じる事が出来る特性を挙げてみました。以上のように、複数の動作を組み合わせた運動を苦手とします。
私たち人間は、生まれた頃は手足をバタバタと付け根から動かす粗大運動(※1)しかできませんでしたが成長と共に手足の付け根から指先にかけて遠く離れた部分を動かす微細運動(※2)を身につけ全身を目的に合わせた動きをコントロールしていきます。そのために、乳幼児期から学齢期までの間に学校や家庭で様々な活動を行っていく事が早い発達に繋がります。
社会に出るまでの20年間をかけて育てていくと考え、焦らずじっくりと行っていきましょう。
体全身を使った動きの事(乳幼児期の動作、お遊戯やラジオ体操のような動作)
指先を使った精密な動作(字や絵を描く動作、パソコンや機械を操作する動作、箸やカトラリーを使う動作)
◆何から練習するの!?
まずは、苦手な事が何なのか書き上げてみましょう。次に、どことどこの協調運動が苦手なのか分けてみます。そうして、どうして出来ないのか?ご自身がやって見て違いがどこかを考えます。
例えば、消しゴムでノートを破いてしまうの行動を分析していきましょう。
□行動
1)左手でノートの左側を押さえる
2)右手で消しゴムを持つ
3)消したい部分に消しゴムをこすりつける
4)ノートが消す力でズレる、もしくは紙にシワがつく
5)きれいに消えずに紙が破ける
1)〜5)の流れで紙を破いてしまう行動の流れが分かりますね。
- 1)と2)の場面では決して紙は破れないので除外していきます。
- 3)で破れる可能性のある行動は、消しゴムをこすりつける場面ですね。
- 4)では、ノートを消す力で、紙がズレたりシワになったりしましたね。
ご自身との違いは、黄色のマーカー部分ではないでしょうか?どうも紙を破く原因がありそうです。紙が破けるには、紙を左右につまみ(持ち)逆の方向に手首をひねりますね。このような力がかからないと破けないのが紙なので、ここにヒントがあるようです。
左右につまんで逆方向に力がかかるような場面は、消しゴムをこすりつける場面となります。では、この場面も細分化して見ます。
6)消しゴムを紙に押し付ける
7)消しゴムを持った手を左右や上下に反復させる
8)ノートがズレないように左手は抑えている
この3つの動作を少し変えて練習をしてみる。
- 6)消しゴムを紙にスレスレにつくようにあてる
- 7)消しゴムを持った手を優しく斜め上下に(5センチ)ぐらいで反復
- 8)抑える手の位置は、消したい部分のページにかかるように押さえる
- 最後に子供さんへ知識として鉛筆の色はどのように紙についているのか説明してあげる(鉛筆の芯が色紙のように重なって字が見えるため強く消しゴムを当てると消えにくく軽く浮かして擦るときれいに消える)
体の使い方で、重要なのは力加減です。力加減をコントロールしていく事はとても難しく沢山の練習が必要になります。叱ったり、あきれたりしないで辛抱強く寄り添ってあげてください。
また、知識を入れることで意識をして力加減を掴んでいく事が出来ますのでワンポイントアドバイスはとても有効になります。
指導を行うご家族は、何が原因で上手くいかないのかを先に分析して指導にあたられることをお勧めいたします。
乳児期・幼児期も合わせてご参考にされてください。
◆学童期の子育てを楽しむ
人間の人生は、長くて短いものです。
近年、いじめによる自殺や引きこもり問題が顕著化していますが子育ての中で一番大切な事は、子供の自己肯定感を下げない事だと思います。
出来なかった事をコツコツ練習をして出来るようになるまで頑張る力を付け自信に変えることで、早くて20年で親から自立していきます。
思春期になると、一人で生まれて育ってきたと勘違いしてないかしらと思えるほど、ふてぶてしくなる子どもですが、小学生まではやはり親を全面的に頼りにしているようです。
あともう少しと考えて、子育てを楽しみながら思い出を沢山残しましょう。